今回読んだ本
著:伊奈めぐみさん
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「頭脳勝負」(ちくま文庫)
著:渡辺明さん
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史上4人目の中学生棋士であり、若干20歳で竜王になったトップ棋士、渡辺明さんが将棋について書いた本。
第一章のタイトルは「頭脳だけでは勝てない」。本書のタイトルは「頭脳勝負」にも関わらず、いきなり更なる奥行きを見せられます。
将棋は息の長い戦いで、プロとして戦える期間が比較的長く、また1回の対局も1日〜2日掛かりで行われるとのこと。
そのため、継続的に努力し続けることも必要ですし、対局の中でも集中力のメリハリをつけながら戦う必要がある。
これはまさしく、(レベルの違いこそあれど)日々頭脳労働を求められる私にも当てはまる部分が多くあり、参考になります。
また、羽生さんの「直感力」と同じく、直感(棋士の間では第一感と呼ぶらしい)に関する記載もありました。
持って生まれたものや、日々の調子の問題もある一方、やはり日々の積み重ねから自然と良い手が見えてくるという主旨の記載があり、日々コツコツと積み上げていくことの重要性を改めて感じます。
次章以降も、将棋プロの制度や生活、将棋ソフト「ボナンザ」との対決、将棋の簡単な解説や、竜王のタイトル防衛戦に関する解説等、将棋を深く知らない人でも「将棋って面白そうだな」と感じられる内容です。
Youtubeで渡辺明さんがお話しされている動画も拝聴しましたが、軽快な語り口で解説をなされており、とても面白い。
本書も同様に楽しみながら読める内容となっており、将棋の実力がトップクラスなだけでなく、受け手を楽しませながら将棋を語る点でも非常に優れている方なのですね。
私は将棋はルールを知っているくらいでしたが、羽生さんの「直感力」と本書をきっかけに徐々に将棋への興味が高まり、近頃「見る将+詰将棋少々」くらいの立ち位置になりました。
仕事の休憩に簡単な詰め将棋を少し解いたりすると、リフレッシュとなって良いです。
ちなみに、奥様が描かれた「将棋の渡辺くん」という漫画も出ており、こちらはまた別の意味で面白そうなので購入しました。
別途読書録を書く予定です。
今回読んだ本
「戦略読書日記<本質を抉りだす思考のセンス>」(ちくま文庫)
著:楠木建さん
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硬軟問わず様々なジャンルの本を紹介しながら、それぞれの本に埋め込まれた「センス」を楠木さんの視点から取り出して話を展開しており、抜群に面白い。
センスやその発揮の仕方は人それぞれ。
本当に、ヒトは姿形だけを見ると似ているように見えるけれども、内的な性質は一人一人全く違うんだということがよくわかります。
これだけ色々なセンスの発揮の仕方を見ると、自分の芸風についても改めて考えてみたくなる。
また、巻末のロングインタビューもユルめで楽しく読めました。
とにかく一日中、本を読みまくっているとか。
素晴らしい生活です。
今回読んだ本
「右脳思考を鍛える―「観・感・勘」を実践! 究極のアイデアのつくり方」(東洋経済新報社) 著:内田和成さん
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「スパークする思考」の復刊と聞いて購入しました。
有名な「仮設思考」と同様、よくあるスキル本とは一線を画す良書です。
自然体を大切にしながらも、知的生産のプロとしてキッチリとアウトプットに繋げていくための方法論に仕上がっているのは流石です。
この本の一番の価値は、右脳を使った「身軽」かつ自然体なパフォーマンスの上げ方を、真正面から説明している点だと考えています。
もっとパフォーマンスを上げようと思うと、より多くの情報を集めてしまったり、新しい領域を勉強してみたりして、ついつい「身重」になってしまいがちですが、右脳を使って「身軽」でありながらパフォーマンスを上げていくことは、その素晴らしさや方法論について、真正面から語られることは少ないのではないかと思います。
世に出回っているスキル本を読んで、何か違うなと感じている方には、大きな発見があるかもしれません。
おすすめです。
今回読んだ本
「スミス・マルクス・ケインズ よみがえる危機の処方箋」(みすず書房) 著:ウルリケ・ヘルマンさん
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タイトル通り、経済学の三大巨人にフォーカスを当てた本。
経済学が、現実の経済から離れて過度な理論追求を進める風潮にあると強く批判した上で、各時代の経済的な課題に対し最適解を出そうとたスミス・マルクス・ケインズを振り返ることの重要性を著者は指摘しています。
理論化や、数学的なアプローチを取り入れて経済学を発展させていくこと自体は重要ではありますが、「より良い社会/経済を実現していくためにはどうすべきか?」という問いを中心に据えることが重要である、すなわち、目的と手段を倒錯すべきではない、という考えがこの本においては貫かれていますが、これは何も経済学だけに限った話ではなく、あらゆる取り組みに言えることです。
自分自身の活動を振り返っても、目的を達成するための手段だったことが、いつの間にか目的そのものにすり替わってしまっている、ということはよくありますが、そんな時に当事者である自分ではなかなか気づかないことが多い。
他者の何気ない指摘から、ようやく気づくことができることができることが殆どです。
こちらの本も、著者のウイリケさんは経済学者ではなく、あくまで経済現象を観察するジャーナリストとして、あえて「外野」の目線で考える、ということにより、目的と手段が倒錯しているのではないか、ということを浮き彫りにしようとしており、だからこそ根源的な問いに迫ることができているのではないか、と感じています。
また、彼ら(スミス・マルクス・ケインズ)の著作は重要ではあるものの、それぞれがそれなりに難しい内容であり、また著作が書かれた文脈が掴めていないとなかなか一人で読み切ることは難しいと感じていました。
こちらの本は、スミス・マルクス・ケインズの生涯を簡単になぞりながら、主要な著作がどのような文脈や課題意識から生まれてきたのか、ということをわかりやすく記述しており、私のような素人としては非常に取っ付きやすい内容でした。
経済学を深く学んでいない方にもオススメできる本です。
今回読んだ本
「仮説思考」「論点思考」(東洋経済新報社) 著:内田和成さん
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最近、仮説と論点の重要さを改めて強く認識したため再読。
社会人成りたての20代前半で読んだ時にも、この2冊は優れた本だと思っていましたが、今回再読して本当の凄さがわかりました。
これまで仕事で得た学びが凝縮されています。
コンサルファームに所属していますが、現在でも優れたコンサルタントに共通するのは、仮説思考と論点思考を持っていることだと感じます。
「仮説思考」「論点思考」という本は、書店ではロジカルシンキングの本として扱われていることもありますが、一般的に言われているロジカルシンキング的な能力とは異なるものです。
ロジカルシンキングは分析的な能力を指していることが多いですが、仮説思考・論点思考は分析ではなく、より統合的に物事を捉え考えていく力です。
読んだ本
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将棋のトップ棋士である羽生善治さんが、これまでの棋士人生で磨き上げてきた直感力について書いた本。
羽生さんの書かれた本では、「決断力」や「大局観」も有名で版を重ねており、こちらも名著には違いないですが、私はこの「直感力」が最も面白いと感じました。
何故なら、コンサルタントという自分の思考だけが頼りである仕事をする中で、直感がいかに強力な武器かということを日々強く感じているためです。
将棋は1つの場面で約80通りの可能性があるそうですが、羽生さんはそのうちの77、78手は捨ててしまい、残りの2、3手に直感を使って瞬時に絞り込んでしまうという。
これは、これまで経験したことや学んだことが作用して、その瞬間に直感が働いていると羽生さんは考えられている。
私はこの考えには非常に重要なポイントが含まれていると思います。
羽生さんのレベルには全く至らないものの、私も仕事で自分なりの仮説を構築する際に、まずは直感で大体の方向性を決めています。
もちろん、ロジック面での検証はするのですが、それはあくまでその仮説の筋が良いかどうか、もしくは致命的な間違いを犯していないかどうかを検証するために行うものです。
これは即ち、いわゆる「仮設思考」を行なっているということです。
一方で、いつどんな場面でも直感が正しく働くのかというと、そうではありません。
自分がある程度経験していたり、考え抜いたことのある事柄や、そこから導き出されるパターンの蓄積が自分の中にある場合に限り、直感的に筋の良い仮説を出すことができます。
そのため、普段の積み重ねが非常に重要だと考えています。
仮説を出す段になって努力しても遅く、これまで自分がどれだけの積み上げをしてきているかが、ある一瞬で直感を発揮できるかどうかを決めるのではないかと思います。
このように自分で何となく重要だと考えていたことが、本書ではとても簡潔に、しかし深みを持って書かれている素晴らしい本です。
また他にも、余白の大切さや、自然体でいることの重要性など、直感を考える上で非常に参考となるポイントがいくつも含まれています。
将棋を指す方だけでなく、「考える」ということに興味のある方にはとてもオススメできます。